「性的人間」
- 作者: 大江健三郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1968/04/29
- メディア: 文庫
- クリック: 56回
- この商品を含むブログ (52件) を見る
10月2日読了。夏休み45冊目。2012年75冊目。
今回の大江健三郎作品もハズレなし。個人的傑作ばかり。大江健三郎にしても安部公房にしてもサルトルの影響を受けているらしいのでサルトルの「嘔吐」を10月中に読みたい。めっちゃ高いけど。
・性的人間
前半よりも後半部。後半部の3人の痴漢哲学はリアルの世界でタブーに束縛されて生きる我々に斬新な印象を与えると思われる。
・セブンティーン
2009年7月代ゼミ東大模試の昼休みに立川の古本屋で見つけた「17歳の狂気」という本、椎名林檎の歌う「17」という曲など、中学2年生と同程度に頻繁に取り上げられる「17歳」という年齢。個人的にも21年生きてきて17歳は特異だったし分岐点だったなと今振り返って思うので、その点でこの作品は強烈で刺激的でぶっ通しで読了した。
劣等感や自意識過剰や無限の中にいる自分の無力さに懊悩し、他人の目を排除して自己の世界に没入する猫にあこがれる17歳が、皇道派という極右の鎧によってそのような悩みを克服し自分主体の世界の主導権を握る物語。第2部「政治少年死す」は右翼団体からの抗議で出版されてないが、クソ気になる。
おれは《右》の遮蔽幕のかげに、傷つきやすい少年の魂を永遠に隠匿してしまったのだ。(P177-178)
少年は私情を捨てて天皇に全てを捧げることを誓ってるけど、彼の極右思想は実質100%私情という。
・共同生活
商会の調査室で無機質な仕事に従事する青年は、同居する4匹の猿に憎悪を抱いているが一方で彼の生活全体でもある。残り数ページのオチが全てなのでここでのネタばれは防ぐ。世間相場の幸福は、必ずしも個々の幸福とは限らない。