「若者よ、マルクスを読もう」
- 作者: 内田樹,石川康宏
- 出版社/メーカー: かもがわ出版
- 発売日: 2010/06/18
- メディア: 単行本
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内田樹と石川康宏の書簡形式のマルクス入門本。少し頭の良い高校生向けの本。
本書で紹介されているのは以下の5冊。
「共産党宣言」
「ユダヤ人問題によせて」
「へーゲル法哲学批判序説」
「経済学・哲学草稿」
「ドイツ・イデオロギー」
「共産党宣言」と「ドイツ・イデオロギー」は本屋で立ち読みした感じ難しそうだった。他の3冊は見たことがない。
☆
マルクス(とエンゲルス)の思想の背景には、労働者が酷使されているのを自身がリアルに見たことに由来する。当時主流であった「人間というもの」についての抽象的な議論を脱して現実の問題に落としこめるような思想体系を志向した。マルクスの考える共産主義革命とは、「暴力革命」ではなく、議会を通じた革命であった。政権を握って官僚機関をはじめとした関係機関にその力を隅々に浸透させる、つまり労働者階級の政治的な権力を確立しそこを基点に資本主義的な労使関係を転換していく、そのようなものであった。革命とは、市民社会内部でおこった矛盾の副次的形態である。
また単にマルクスと言ってもそこには段階的な思想的展開がある。マルクスの思想体系が「科学的社会主義」と呼ばれるのは「ドイツ・イデオロギー」後である。共産主義は決して理想ではなく、資本主義の問題を一つ一つ解決した先にあるものなので、「空想的社会主義」とは異なる「科学的社会主義」に特徴づけた。
・ユダヤ人について
「現代社会の解放」=「ユダヤ教からの解放」というマルクスが提示した図式。
(内田氏の見解の要約)しかしこの書き方はアンフェアである。ここでいう「ユダヤ人」とは「利己的な活動をする者」を意味する比喩(言い換えれば汎用性の高い名詞)にすぎないからである。そもそもユダヤ人は伝統的な業界への参入を拒否されたことで自ら新しい業界を作りだした歴史を持っている。そういう状況へやむを得ず追い込まれた人種を、市民社会が脱すべき地点と結び付けるのは避けるべきであった。
(石川氏の見解の要約)ユダヤ教からの解放とは、商売・貨幣・私利からの現代社会からの解放であるとマルクスは考えた。ユダヤ人を発生させる現代社会に焦点を移し、「市民社会」の人間的解放を達成する必要性があると説いた。
☆
石川氏はテクストの解釈や説明が中心で内田氏はマルクスの人間性の解釈が中心だった。石川氏の「ドイツ・イデオロギー」の解釈で出てきた原文が難しかった。内田氏の本は3冊目だが、彼の文体が好きかもしれない。最後の方の「額縁」と「人間の多様性」の話が良かった。
適当にまとめたので時間があればまた書き足したりする。